「『蒼天囲みし小世界』ー!!」
瞬間。盾に刻まれた世界が動き出し、膨れ上がった。極小の世界が盾の前面に展開され、
空間と時間を再構築した。
神殺しの槍に唯一対抗し得るは、まさに世界そのものである防御宝具。
授受の契約を交わし、何より互いの意志が統一されている以上ーこの盾は一時である“黒”のライ ダーの宝具と して起動する。
「ぐ、う、っう。。。!!」
神殺しの槍が世界に食い込み、破壊しようとする。恐るべき威力で世界を溶解させ、沸騰させ、蹂 躙する。
だが、しかし。
「嘘、だろ……」
カウレスが絶句する。無敵とも思えた槍の光は、完全に盾に阻まれていた。
神を殺す槍『日輪よ、死に随え』ならば、"唯一つ"であるあらゆる存在を滅ぼすだろう。
人も、軍、城も、何もかも。
しかし、神を殺せても世界は殺せない。神を滅ぼしたところで、神が不在の世界になるだけでしか ない。広大な る天と地と海は神が滅びようが茫洋と広がり、総体としての人類は凱歌を掲げ続ける。
それこそが、アキレウスの生きた、“世界"。
神殺しに対抗し得るは、まさに世界そのもの。
掲げた腕が折れる。歯を食い縛り、もう一方の腕で折れた腕を支えた。激痛のシグナルをただ愚直 に堪えて“黒 ”のライダーは声高らかに叫ぶ。